前回の記事で世界で最も影響力のある言語ランキングをご紹介しました。
世界の言語ランキング(母語者数、最も影響力のある言語ランキング)
世界で最も影響力のある言語とされる英語ですが、一般に日本人で英語がバイリンガルで話せる人の割合は少ないといいます。
これから英語やその他外国語を習得していきたい人にとっては、その言語ニーズも重要ですが、言語の習得のしやすさも気になるところです。
今回は日本人にとって、比較的習得しやすい言語、反対に難しい言語はどんな言葉かを調べてみました。そして日本語のルーツについても少し触れていきたいと思います。
- 日本人の英会話力は低い ?
- TOEFLスピーキングスコア アジア国別ランキング
- 日本人にとって英語は比較的習得が難しい言語
- 日本人にとって習得しやすい言語ランキング
- 世界の言語系統図
- 日本語の由来は不明。漢字が共通の中国語とも全く異なる言語。
- 日本語と韓国語の関係
- 日本語は一体どこから来たのか?
- まとめ
日本人の英会話力は低い ?
残念ながら、日本はTOEFLスピーキングテストの結果において、アジアで最低のレベルとなっています。(30カ国中の30位)。
総合順位においても、30カ国中27位となっていて、ある種予想通りの結果ではありますが、日本人の英語力の低さが浮き彫りとなっています。
TOEFLスピーキングスコア アジア国別ランキング
順位 | 国 名 | スコア |
---|---|---|
1 | イ ン ド | 24 |
1 | パキスタン | 24 |
1 | シンガポール | 24 |
2 | フィリピン | 23 |
16 | 韓 国 | 21 |
22 | 中 国 | 19 |
30 | 日 本 | 17 |
(参照:Test and Score Data Summary for the TOEFL iBT Tests)
日本人にとって英語は比較的習得が難しい言語
英語圏の人々にとっては日本語の習得が大変難しいとされています。
外交官などを養成するアメリカの外務職員局(FSI:)が、英語を母語とする者が習得するのにかかる期間を元に各言語の習得難易度をまとめています。
(Language Learning Difficulty for English Speakers)
それによると、日本語はカテゴリーⅢ="英語のネイティブスピーカーにとって極めて困難な言語”に分類されています。
このカテゴリーⅢには、日本語の他にアラビア語、北京語、広東語、韓国語も同じカテゴリーに含まれています。
これとは反対に、日本人にとって英語の習得は比較的難しいといえるようです。
次にご紹介するの、語学スクールのDILAが作成した日本人における各言語の習得難易度を表した分類表です。
日本人にとって習得しやすい言語ランキング
日本語母語者の言語習得難易度分類表
難易度:Ⅰ・比較的やさしい ⇔ Ⅳ・比較的むずかしい
難易度 | 言語 |
---|---|
Ⅰ | 韓国語、インドネシア語、マレーシア語、スワヒリ語 |
Ⅱ | スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、中国語、ベトナム語 |
Ⅲ | 英語、フランス語、ドイツ語、ハンガリー語、タイ語 |
Ⅳ | ロシア語、ポーランド語、チェコ語、アラビア語 |
(参考:DILA社データより作成)
このランク分類でみますと、日本語を話す人間にとっては、韓国語(朝鮮語)(Ⅰ) ⇒中国語(Ⅱ)⇒英語(Ⅲ)⇒アラビア語(Ⅳ)になるにつれて難しくなるようです。
韓国語は日本語と文法が似ていて語順も同じ(S.O.V式)なため、日本人にとっては比較的習得しやすい言語になるようです。
一方、中国語は文法や語順(S.V.O式)が異なっているものの、漢字という共通の文字があるために、英語と比べると習得がしやすいようです。
そして英語はランクⅢとなっていて、日本人にとっては少し難しい言語の分類になっています。
最も難しい部類のアラビア語ですが、日本人にとっても、英語圏の人にとっても最も難易度が高い言語ということになります。
確かにアラビア語の文字は、日本人にはほとんどなじみがなく、発音はもちろんのこと、文字を左右のどちらから読むのかもわかりません。
「اَسَّلاَمُ عَلَيْكُم」
→「アッサーラム・アライクム」(意味:こんにちは ※右から読むそうです)
ちなみにアラビア語は世界でも5番目に母語者の多い言語になっています。
世界の言語ランキング(母語者数、最も影響力のある言語ランキング)
ところで、これらランク分類の言語の体系は、「その言葉がどこから派生したのか」ということと大きく関係しています。
以下に言語系統図を示していきます。
世界の言語系統図
左にある幹は「支那コーカシアン」です。
幹の上方にある最も大きな葉が「マンダリン(北方語)」で、数ある中国語の方言の一種で北京語(=標準語)を示しております。
同じ幹からは、タイ語も分岐しています。
右側の最も大きな幹は、「印欧語」です。
上部の葉には、英語、スペイン語、ロシア語、ベンガル語、ヒンドゥー語などが見えます。
根元の方の分岐から、アラブ語やタミル語、アルタイ語などの言語が派生しています。
一番右の幹は「オーストリック語」でマレー語、ジャワ語、タガログ語、ベトナム語などの系統になっています。
日本語の由来は不明。漢字が共通の中国語とも全く異なる言語。
言語系統図を見ていくと、ヨーロッパの言語はすべて元をたどると同じ幹なのに対し、系統図上で印欧語の幹の右隣に位置する日本語は、根元の無い幹から派生しています。
これは元となっている言語の系統が不明であるということです。興味深いことに隣の韓国語も同様です。
そして、意外にも人種的にも近く、漢字の輸入元となっている隣りの中国語は、漢字・漢語から受けた影響は非常に強いものの、文法が全く違うため言語の系統としては全く異なっているようです。
どれだけ単語の共通が多くても、文法が異なると言語の系統も異なると考えられています。
たとえば日本語の中には、非常に多くの西洋由来のカタカナ語が入ってきておりますが、日本語の語順はカタカナが入る以前から何一つ変わっていないことからも理解できると思います。
おそらく古代の日本でも、中国から物と一緒に言葉もたくさん輸入されてきたと考えられます。
しかし、それでも本来の日本語の語順は変わらなかったはずです。それだけ変わりにくいのが語順・文法で、言語系統を考えるのに、特に重要になるそうです。
日本語と韓国語の関係
次に日本語と韓国語はどういう関係なのかということですが、比較的近いとされる韓国語も、語順が同じなど文法は近いものの、こちらは基礎語の対応がほとんど無く、遠い親戚関係の可能性があるかもしれないという程度のようです。
しかし、韓国語を学習した人からは、日本語と韓国語は似ている言葉がたくさんあるという話を聞きます。
実はこれも、中国同様に日本と朝鮮半島では歴史的に長い交流があったため、半島経由でのモノの伝来に伴って言葉もたくさん借り入れているからです。
それらを差し引いたとき、日本語学者からすると逆に文法以外の共通点が少なすぎるとのことです。
もちろん、日本人にとっては習得しやすい言語であることは間違いない韓国語ですが、なぜ文法が近いのに日本語と同じ言語系統ではないと言いきれるのでしょうか。
日本語は一体どこから来たのか?
日本語学者の大野晋先生によると、言語系統を見る上で重要なのは、文法や語順、そして基礎語の対応にあるようです。
ちなみに基礎語とは「手」「足」「頭」「山」「ある」「歩く」「見る」のような、その言語誕生の早い時期から存在していたと思われる言葉です。
例えるなら、子供が小さいうちに覚えるような言葉ということですが、これらの基礎語はいくつもありますが、実は「万葉集」の時代から言葉が変わっておらず、古代から大きな変化は少ないと考えられます(発音の変化は不明)。
よって、これらの言葉で日本語と同じ意味をあらわす他の国の言葉とを一つずつ摺り合わせて、対応性(類似性)を見ていくのだそうです。
しかしながら、これらの言葉の対応を探した時に、祖先語が同じなら必ず類似性があるはずですが、アイヌ語、朝鮮語(韓国語)、高砂語(台湾)、満州語、モンゴル語のいずれにも対応性が見つからないそうです。
また、この研究を困難にする大きな理由は、これらの国では、古代に文字が無かったことが障壁になっているようです。
因みに琉球語については、一般的に日本語の一方言という分類です。
日本語がどこから来たのかは、100年以上前から日本語学者が研究してきたテーマですが、いまだに結論が得られていません。
言語分類上は、広義には日本語はアルタイ諸語(ユーラシア大陸に広く分布)に区分されています。
(参考書籍)
日本語の由来を考察している書籍です。古代に文字を持たなかった言語同士の基礎語のすり合わせは困難を極めることがわかります。因みに 著者はインド南部のタミル語と日本語との深い関係性を指摘しています。
言葉の習得のしやすさは、母語と習得したい言語とのルーツの近さに影響を受けています。
ルーツが離れていると習得しにくく、近いほど習得しやすいようです。
そして日本語はどこから来たのかというテーマは、いまだに結論が出ておらず日本語学者を悩ませる課題の一つのようです。
まとめ
- 日本人の英語力はアジアの中で低い。
- 日本人にとって英語は取得が比較的難しい言語
- 日本人が取得しやすいのは韓国語やインドネシア語、マレーシア語など
- 日本語のルーツは中国語とは全く異なる。韓国語は近いが遠い親戚程度。
- ルーツの解明には基礎語が重要。対応性のある言語はまだ見つかっていない。
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