今回ご紹介するのは、経済協力開発機構(OECD)が2019年12月3日に発表した国際的な学習到達度調査「PISA2018」の結果です。
3年に1度の国際的な大規模学力調査(PISA)
PISA(学習到達度調査)は、義務教育終了の15歳を対象に3年に1度実施されている学力調査です。 今回の調査では79カ国、60万人の生徒が参加しました。日本からは国公私立高の1年生、6,100人の参加となりました。
参加国の内訳はOECD加盟37カ国及び非加盟42カ国・地域となっています。
評価項目は、「読解力」、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」の3つです。3年ごとに3分野のうちの1分野を順番に中心分野として重点的に調査します。2018年調査においては、「読解力」の項目が中心分野となっておりました。
学習到達度ランキング(PISA2018)
読解力
順位 | 読解力 | 平均得点 |
---|---|---|
1 | 北京・上海・江蘇・浙江 | 555 |
2 | シンガポール | 549 |
3 | マカオ | 525 |
4 | 香港 | 524 |
5 | エストニア | 523 |
6 | カナダ | 520 |
7 | フィンランド | 520 |
8 | アイルランド | 518 |
9 | 韓国 | 514 |
10 | ポーランド | 512 |
11 | スウェーデン | 506※ |
11 | ニュージーランド | 506※ |
13 | アメリカ | 505※ |
14 | イギリス | 504※ |
15 | 日本 | 504※ |
16 | オーストラリア | 503※ |
17 | 台湾 | 503※ |
18 | デンマーク | 501※ |
19 | ノルウェー | 499※ |
20 | ドイツ | 498※ |
青字はOECD非加盟国・地域
※11位~20位は統計学的な有意差なし
数学的リテラシー
順位 | 数学的リテラシー | 平均得点 |
---|---|---|
1 | 北京・上海・江蘇・浙江 | 591 |
2 | シンガポール | 569 |
3 | マカオ | 558 |
4 | 香港 | 551 |
5 | 台湾 | 531※ |
6 | 日本 | 527※ |
7 | 韓国 | 526※ |
8 | エストニア | 523※ |
9 | オランダ | 519 |
9 | ポーランド | 516 |
11 | スイス | 515 |
12 | カナダ | 512 |
13 | デンマーク | 509 |
14 | スロベニア | 509 |
15 | ベルギー | 508 |
16 | フィンランド | 507 |
17 | スウェーデン | 502 |
18 | イギリス | 502 |
19 | ノルウェー | 501 |
20 | ドイツ | 500 |
青字はOECD非加盟国・地域
※5位~8位は統計学的な有意差なし
科学的リテラシー
順位 | 科学的リテラシー | 平均得点 |
---|---|---|
1 | 北京・上海・江蘇・浙江 | 590 |
2 | シンガポール | 551 |
3 | マカオ | 544 |
4 | エストニア | 530※ |
5 | 日本 | 529※ |
6 | フィンランド | 522 |
7 | 韓国 | 519 |
8 | カナダ | 518 |
9 | 香港 | 517 |
10 | 台湾 | 516 |
11 | ポーランド | 511 |
12 | ニュージーランド | 508 |
13 | スロベニア | 507 |
14 | イギリス | 505 |
15 | オランダ | 503 |
16 | ドイツ | 503 |
17 | オーストラリア | 503 |
18 | アメリカ | 502 |
19 | スウェーデン | 499 |
20 | ベルギー | 499 |
青字はOECD非加盟国・地域
※4位~5位は統計学的な有意差なし
(出典:国立教育政策研究所)
3分野ともに首位が中国、2位がシンガポール
今回の調査では、OECD非加盟国・地域から42カ国が参加していますが、3分野ともに首位は中国(北京・上海・江蘇・浙江)、そして2位は全てシンガポールです。
シンガポールは前回調査では全て首位でした。今後も中国との首位争いが続きそうです。
そして3位は全てマカオという結果になり、アジア勢、特に中国圏とシンガポールの学力の高さが際立つ結果となっています。
日本の結果
参加国の中で日本は「読解力」15位、「数学的リテラシー」6位、「科学的リテラシー」5位といずれも前回調査時より低い順位となりました。
しかしながら、過去の調査と比べて今回のみ特別に下がったというわけではありません。
数学的リテラシーと科学的リテラシーはOECD加盟国の中では、1、2位の高い水準を維持しております。(非加盟含むと5位、6位)
一方で「読解力」は、前回の8位からは大きく順位を下げ、最低タイ(2006年:15位)の結果となりました。また読解力は調査のたびに順位変動が大きく動く傾向があります。
以下は重点項目「読解力」に関するアンケート調査の一部です。
(OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント)
(OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイントより)
日本を含むOECD全体の傾向
- 本の種類にかかわらず、本を読む頻度は、2009年と比較して減少傾向にある。
・「月に数回」「週に数回」読むと回答した生徒の割合(例)「新聞」:日本21.5%、OECD平均25.4%「雑誌」:日本30.8%、OECD平均18.5%
- 読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒の方が、読解力の得点が高い。中でも、フィクション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力の得点が高い。
日本の特徴
- OECD平均と比較すると、日本は、読書を肯定的にとらえる生徒の割合が多い傾向にある。
・「読書は、大好きな趣味の一つ」:日本45.2%、OECD平均33.7%
・「どうしても読まなければならない時しか読まない」:日本39.3%、OECD平均49.1%
- OECD平均と比較すると、コミック(マンガ)やフィクションを読む生徒の割合が多い。新聞、フィクション、ノンフィクション、コミックのいずれも、よく読む生徒の読解力の得点が高い。
デジタル機器の利用状況について
- 日本は学校の授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD加盟国中最下位。
- 「利用しない」と答えた生徒の割合は約80%に及び、OECD加盟国中で最も多い。
日本における課題ですが、数学的リテラシー、科学的リテラシーは中国、シンガポールなどには差を開けられているものの、国際的にも高い水準です。
今後は、読解力の底上げができるかがカギとなりそうです。
また他のOECD加盟国に比べ学校の授業におけるデジタル機器の利用割合も非常に低いため、今後デジタル機器の活用をいかに推進していくかが重要と思われます。