ステイホームが長期化することで心配されるのが運動不足です。精神的にも肉体的にも良くないことは明白ですが、このまま解除まで家でじっとしていると身体はどうなるのでしょうか?本当に困った問題ですね。
そこで今回は我々の身体の筋肉量とその減少について調べてみました。
中年以降は1歳年を取るごとに筋肉量が1%も減少
人間の身体において、筋肉の減少は我々が想像している以上にスピードが速いようです。一般的には中年以降は年齢をひとつ重ねるごとに筋肉量は1%づつ減少していると言われています。
これは10歳年齢が上がると1割もの筋肉が減少するという計算になります。
年齢と共に筋肉量が減少する理由として、一つはホルモンの影響があります。
特に男性の方が女性より加齢に伴う減少の割合が 高いのですが、筋肉を合成する男性ホルモン(テストステロン)の分泌が加齢とともに減少することと関係があります。
下肢(下半身)の筋肉が最も落ちやすい
中でも特に落ちやすいのは実は下肢(下半身)の筋肉です。ヒラメ筋と腓腹筋から構成される下腿三頭筋と呼ばれるふくらはぎの筋肉は、2日間使わなかっただけで実に1%も落ちてしまうと言われています。
言われてみれば宇宙飛行士が帰還した時に、筋骨格の衰えで自力で歩けずベッドに横たわって帰還していた映像を思いだすと納得感があります。もちろん宇宙では無重力下という特殊な条件下のため、より一層衰えやすいという事情はあるようです。
ではなぜ筋肉はそんなに簡単に減ってしまうのかということですが、その理由は人類が長い歴史の中で常に飢餓と戦ってきたことと関係があります。
筋肉の身体に占める割合は大きく、多くのエネルギーを消費する器官です。筋肉が多くのエネルギーを消費するということは、狩猟、採集時代の限られた食料事情の環境下では燃費効率としてはむしろ非効率な器官ということです。
よって人類の進化の過程で、筋肉は使われない状況下では「今は必要ない」とされ、大きい筋肉ほど減りやすいという仕組みになりました。
18歳から80歳までの日本人男女4003人の筋肉量を調べた調査(図1)では、20歳時と80歳時を比べた時に最も筋肉量が落ちのるが下肢です。男性30.9%・女性28.5%の大幅な減少率となっています。
一方で体幹の筋肉量は落ちていません。これは落ちていないというより、下肢筋肉量のピークが男女ともに10代であるのに対して、体幹筋肉量のピークは男性45歳、女性50歳とピーク時期にずれがあるいうのが最も大きな理由です。
20歳時と80歳時の推定筋肉量(図1)
性別 | - | 上肢筋肉量(㎏) | 下肢筋肉量(㎏) | 体幹部筋肉量 | 全身筋肉量(㎏) |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 20歳時 | 5.5 | 20.7 | 26.1 | 52.3 |
80歳時 | 4.6 | 14.3 | 24.6 | 43.5 | |
減少率 | 16.4 | 30.9 | 5.7 | 16.8 | |
女性 | 20歳時 | 3.3 | 14.4 | 18.6 | 36.3 |
80歳時 | 3.2 | 10.3 | 18.2 | 32.3 | |
減少率 | 3.0 | 28.5 | -1.0 | 11.0 |
以上のように体幹以外の筋肉は落ちやすく、中でも下肢の筋肉は減少率が大きいので積極的に動かして落とさないようにすることが大切と言えます。
次に自分の意志で唯一動かすことが出来る筋肉※「骨格筋」について、具体的に全身の中でどの部位の筋肉が大きいのか、筋肉量ランキングです。
(※筋肉には骨格筋や心筋などの横紋筋と内臓や血管の筋肉である平滑筋の2種類があり、心筋と平滑筋は自らの意志で動かすことが出来ません)
部位別筋肉量ランキング
順位 | 部位 | - | 筋肉量 |
---|---|---|---|
1 | 大腿四頭筋 | 下肢 | 1913㎥ |
2 | 大殿筋(※注2) | 下肢 | 864㎥ |
3 | 三角筋 | 肩 | 792㎥ |
4 | ハムストリング | 下肢 | 776㎥ |
5 | 大胸筋 | 胸 | 676㎥ |
6 | 上腕三頭筋 | 腕 | 620㎥ |
7 | ヒラメ筋 | 下肢 | 575㎥ |
8 | 広背筋 | 背筋 | 550㎥ |
9 | 僧帽筋 | 背筋 | 458㎥ |
10 | 上腕二頭筋 | 腕 | 366㎥ |
11 | 腓腹筋 | 下肢 | 322㎥ |
12 | 脊柱起立筋 | 背筋 | 225㎥ |
13 | 腹直筋 | 腹筋 | 170㎥ |
14 | 前腕の筋肉(※注1) | 腕 | 163㎥ |
15 | 腹斜筋 | 腹筋 | 143㎥ |
※注1:腕撓骨筋+円回内筋の和で計上、指伸筋群は入れていません
※注2:中殿筋など他の臀筋群を含めるとお尻の筋肉の容量はもっと多く!
(参考資料:荒川裕志著・石井直方監修「プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典」ナツメ社)
大腿四頭筋(太もも)が最大。全体の7割が下半身に集中!
大腿四頭筋とは太もも前側の部分ですが、その筋肉量は突出して多いことがわかります。これに太もも裏側の(ハムストリング=4位)も合わせると太もも全体の筋肉量は約2700㎥にもなります。これにお尻の筋肉(大殿筋=2位)を合わせると太ももとお尻で全体の半分を占めるほどです。
他にも下半身にはふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋=7位、腓腹筋=11位)など大きな筋肉が集まっています。下半身には身体全体の7割の筋肉が集中しているとされています。
さらには全身の7割の血液も集まっていて、この下半身に集まった血液はふくらはぎの筋肉を使って心臓に戻しています。
このようにふくらはぎは”ポンプ機能”の役割もはたしています。よってふくらはぎの筋肉をつけ座りっぱなしの状態を改善することで、下肢のむくみなどの症状も緩和され、全身の血液循環もよくなります。
このことからも、ふくらはぎの筋肉を維持することは非常に大切です。
また筋肉は多くのエネルギーを消費すると言いましたが、筋肉が増えることで血液中の糖質をエネルギーとして使ってくれるので、インスリンを分解させ、血糖値を下げる役割も果たします。
よって2型糖尿病のリスクも減らすことが出来ます。 逆に筋肉量が落ちると糖尿病のリスクも高まると言えます。
以上の理由から全身の筋肉が集まる下半身の運動は非常に重要といえます。
自宅で出来る最強トレーニングは!?
家の中で出来るトレーニングとして最適なのは「スクワット」があげられます。
数ある自重トレーニング(器具を使わず自分の体重のみの負荷で行うトレーニング)の中でも特にスクワットが良いということは、すでに多くのメディアで取り上げられているのでご存じの方も多いと思います。
このスクワットが”キング・オブ・エクササイズ”と言われるのは、何よりそのカバーできる筋肉の範囲にあるようです。
最も筋肉量の多い大腿四頭筋の強化だけでなく、太もも裏側のハムストリングスや大殿筋(ここまでで全身筋肉量の半分)、加えて腓腹筋、脊柱起立筋、他にも下腿三頭筋、中殿筋など下半身の筋肉をメインに非常に多くの筋肉を一連の動作で鍛えることが出来ます。
ただしこれは正しいやり方で行わなければ効果は半減してしまうので要注意です。
そこでスクワットの中でも基本の「パラレル・スクワット」について、効果を高めるポイントを「初心者必見スクワットの正しいやり方!簡単で効果的なポイント5選」より引用しご紹介させていただきます。
<正しくて効果が高い5のポイント>
ポイント1:足の間隔は腰幅から肩幅程度に開く
ポイント2:つま先はやや外側へ向ける
ポイント3:動作を始めるときには股関節を意識する
ポイント4:ヒザはつま先の方に曲げ、ヒザ頭はつま先より前に出しすぎない
ポイント5:下げたところで一度動きを止める
(Website「初心者必見スクワットの正しいやり方!簡単で効果的なポイント5選」より一部引用)
実施回数の目安は、一度に行える最高回数を適正回数として2~3セット行うと効果的なようです。
これだけでは負荷を感じにくい、逆にきつくて続かないという方は、他にも様々なバリーションがあります。
スクワット以外にもチューブトレーニングなど下半身に効果的な運動がありますので、いろいろと試してみてはいかがでしょうか。
スクワットを楽に続けたいという方におすすめ。なかやまきんに君の「世界で一番簡単で楽な筋トレ」動画です↓
まとめ
- 中年以降、筋肉量は1歳増えるごとに1%減少する
- 下半身の筋肉は特に落ちやすい
- 部位別では太ももの筋肉が圧倒的に大きい
- 下半身の筋肉が全体の7割を占める
- 「スクワット」は1種目で多くの筋肉をカバーできる最強の自重トレ
人間の身体にとって下半身の筋肉量の維持は努力しないと難しいことがわかりました。
ステイホームでウォーキングなども十分に出来ない環境では、スクワットなど下半身に効果の高いトレーニングを一つでも日常に取り入れることが重要と言えそうです。
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