今回はたんぱく質の質に焦点をあてた”プロテインスコア”のランキングです。
エネルギー産生栄養素(三大栄養素)
人間の身体になくてはならない栄養素のうち、エネルギー(カロリー)源となる「たんぱく質・脂質・炭水化物」を『エネルギー産生栄養素』と呼んでいます。以前は、三大栄養素とも言われていました。
糖質
最もエネルギー源として使われやすく、からだや脳を動かす即効性の高いエネルギー源として使われます。
糖質が足りなくなると、脳に必要な栄養素が届かなくなったり、足りないエネルギーを補う為にからだの筋肉や脂肪が分解されてしまいます。
逆に、糖質を過剰に摂取してしまうと、エネルギーとして使われずに余り、中性脂肪に変換されて脂肪となってしまいます。
脂質
エネルギー源として使われたり、細胞膜や臓器、そして神経などの構成成分となったりビタミンの運搬を助けたりするなどの役割があります。
その他、体温を保ったり、肌に潤いを与えたり、正常なホルモンの働きを助ける(とくに女性ホルモン)といった働きがあります。
しかし、摂取量が多すぎると脂肪として蓄えられ、肥満の原因となります。
たんぱく質
筋肉や内臓、髪、爪などを構成する成分で、ホルモンや酵素、免疫細胞を作る役割ももちます。
たんぱく質は体内ではアミノ酸となり、これが細胞の基本成分であり、遺伝子情報のDNAもアミノ酸から作られています。
アミノ酸は20種類ありますが、大きく分けて体内で合成できるアミノ酸と、合成出来ないアミノ酸の2種類に大別されます。
後者は食物から摂取しなくてはならない9種類の特別なアミノ酸で「必須アミノ酸」と呼ばれています。
食品中に必須アミノ酸が1つでも不足していると、タンパク質としての栄養的価値が下がってしまいます。
必須アミノ酸(9種*)
・トリプトファン
・リジン
・メチオニン
・フェニルアラニン
・スレオニン
・バリン
・ロイシン
・イソロイシン
・ヒスチジン*
*上記の9種にヒスチジンを除いた8種を必須アミノ酸とすることもある。
プロテインスコア
たんぱく質(プロテイン)の質を評価した指標として1957年に国際連合食糧農業機関(FAO)がたんぱく質の必要量の国際的基準として初めてに発表したものです。
食品中の必須アミノ酸の配合バランスを点数化したもので、この点数が100に近いほどに人間にとっては”良質なたんぱく質”であることを示します。
以下はプロテインスコアの元となる”アミノ酸の桶の理論”です。
上記の図の例でいえば、左は必須アミノ酸が9種すべて十分に含有しておりプロテインスコアは100点の食品となる一方、右の食品はリジンが大きく不足しているため、必須アミノ酸のバランスを欠いております。
よってスコアとしては大きく減点となります。
プロテインスコアはその後1973年と1985年に「アミノ酸スコア」として再評価され、現在はむしろこの「アミノ酸スコア」の方が幅広く使われています。
基本的にはアミノ酸スコアでは100点の食品が大きく増えています。
プロテインスコアとアミノ酸スコアの比較
食品 | アミノ酸スコア | プロテインスコア |
---|---|---|
鶏卵 | 100 ← | 100 |
牛肉 | 100 ← | 80 |
大豆 | 100 ← | 56 |
牛乳 | 100 ← | 74 |
アジ | 100 ← | 89 |
しかし、今回はあえて最も厳しく実用的であるとの意見も根強い「プロテインスコア」にて、食品ごとのたんぱく質における”質”をランキング化いたしました。
プロテインスコアランキング
ランキング | 食品 | プロテインスコア | 含量(g)*1 | 必要量(g)*2 |
---|---|---|---|---|
1 | 卵 | 100 | 12.7 | 79 |
1 | シジミ | 100 | 5.6 | 179 |
3 | サンマ | 96 | 20 | 52 |
4 | イワシ | 91 | 17.5 | 63 |
5 | 豚肉 | 90 | 13.4 | 83 |
6 | カジキ | 89 | 18.3 | 48 |
6 | アジ | 89 | 20 | 56 |
8 | 鶏肉 | 86 | 21 | 55 |
9 | イカ | 85 | 17 | 68 |
9 | そば | 85 | 3.3 | 357 |
10 | ロースハム | 84 | 18.6 | 64 |
11 | チーズ | 83 | 25.2 | 48 |
12 | 牛肉 | 80 | 19.3 | 65 |
13 | 牛乳 | 74 | 2.9 | 466 |
13 | オートミール | 74 | 13.5 | 100 |
15 | エビ | 73 | 16 | 86 |
15 | 米飯 | 73 | 6.2 | 652 |
17 | カニ | 72 | 20 | 69 |
17 | タコ | 72 | 14.6 | 95 |
19 | すじこ | 66 | 25 | 61 |
19 | サケ | 66 | 20 | 58 |
21 | たらこ | 64 | 26 | 60 |
22 | うどん | 56 | 2.6 | 687 |
22 | 大豆 | 56 | 34.3 | 52 |
24 | なっとう | 55 | 16.5 | 110 |
24 | ソラマメ | 55 | 7 | 260 |
26 | アワビ | 54 | 23.4 | 79 |
27 | 高野どうふ | 52 | 49.4 | 36 |
28 | とうふ | 51 | 6 | 327 |
28 | トウモロコシ | 51 | 3.8 | 516 |
30 | ピーナッツ | 48 | 25.4 | 81 |
30 | ジャガイモ | 48 | 1.9 | 1097 |
32 | 食パン | 44 | 8 | 284 |
32 | みそ | 44 | 12.5 | 162 |
34 | さやえんどう | 36 | 3.1 | 772 |
35 | マッシュルーム | 23 | 3.7 | 1175 |
36 | シイタケ | 18 | 1.5 | 3700 |
37 | コーンフレークス | 16 | 9 | 694 |
*1 含量・・食品100gに含まれるたんぱく質
*2 必要量・・プロテインスコア100に換算してたんぱく質10gの摂取に必要な食品量
(出典:2017Groth Health Promotion Association)
スコアの注意点
このスコアの注意点としては、必須アミノ酸のバランスを主眼とした評価であるため、
量は加味されていない点です。
よって、 筋肉をつけるための目的であればグラフ右の含有量と必要量もあわせて考慮する必要があります。
そして、もう一つはあくまでも”食材単品での評価”ということになります。
たとえば日常の食事では、白米のみで食べることはほとんどなく、たとえば納豆にみそ汁などを加えた組み合わせで食べることが多いと思います。
すると白米単品ではリジンが足りていなかったのが、ごはんと納豆を一緒にとることでごはんに不足していた”リジン”を補え、必須アミノ酸をバランスよくとることが可能となります。
そういった意味では、単品でのスコアを気にしすぎる必要はあまりないと言えます。
しかし、たとえば間食の際に質の良いたんぱく食を1品だけ食べるという場合や食事制限をしている方にとってはこのスコアを役立てることが可能となります。
たまごは最も良質なたんぱく質
1957年版プロテインスコア100点満点の食品はたまご(鶏卵)とシジミのみでした。
なかでもたまごは毎日必ず食べているという人も多く、食のバリエーションやコスト面から日本人に非常にポピュラーな食材です。
そしてたまごは”完全食品”と呼ばれている通り、炭水化物とビタミンC以外の栄養素はほとんど含まれています。
(出典:全国鶏卵消費販促協議会発行 くらしの中のたまごシリーズ)
たまごに含まれているタンパク質中の各種アミノ酸量(全窒素1gあたり、単位:mg)
アミノ酸 | 全卵(100g) | 卵黄(100g) | 卵白(100g) | |
---|---|---|---|---|
◎ | イソロイシン | 340 | 330 | 350 |
◎ | ロイシン | 550 | 540 | 560 |
◎ | リジン | 450 | 470 | 430 |
◎ | メチオニン | 210 | 160 | 250 |
○ | シスチン | 160 | 130 | 200 |
◎ | フェニルアラニン | 320 | 260 | 380 |
○ | チロシン | 260 | 260 | 250 |
◎ | スレオニン | 290 | 300 | 280 |
◎ | トリプトファン | 94 | 90 | 98 |
◎ | バリン | 420 | 380 | 460 |
◎ | ヒスチジン | 160 | 160 | 160 |
○ | アルギニン | 400 | 440 | 370 |
○ | アラニン | 360 | 320 | 390 |
○ | アスパラギン酸 | 640 | 590 | 670 |
○ | グルタミン酸 | 800 | 730 | 850 |
○ | グリシン | 210 | 190 | 230 |
○ | プロリン | 240 | 250 | 230 |
○ | セリン | 430 | 450 | 410 |
(出所:栄養学コーナー)
◎=必須アミノ酸 ○非必須アミノ酸
たんぱく質の吸収は「半熟たまご」「温泉たまご」が効率的
たまごに含まれるたんぱく質の吸収は、ほどよく加熱(特に白味部分)をすることで最も高まるとのことです。
ただし、加熱のしすぎも良くないため「半熟たまご」の状態が最もたんぱく利用率が高く、消化吸収も速いとのことです。
また「温泉たまご」も同様で、生たまごのたんぱく質吸収率が51%なのに対して温泉たまごでは吸収率が91%まで高まります。
なお、たまごに含まれるたんぱく質の多くは白味部分にありますので、白味を食べないのは非常にもったい限りです。
血中コレステロールへの影響は?
以前はたまごはコレステロールが多く、血中コレステロール値上昇につながるとの理由から1日の摂取量について1~2個までとの意見が通説でしたが、現在は食事からの血中コレステロールへの影響は少ないことが明らかになってきております。
さらにコネチカット大学の栄養科学科の研究では、1日3個のたまごを摂取する人は、同じ量のたまごの代用品を摂る人に比べ、善玉コレステロールが増え、悪玉コレステロールが減ったとの報告もあります。
ただし、たまごの健康に与える研究については良い報告から悪い報告まで様々なものがあるため、急に摂取量を大きく増やすことはあまりおすすめできません。
まとめ
- 三大栄養素の一つたんぱく質は筋肉や髪の材料となり、体内ではアミノ酸に分解
- 20種あるアミノ酸の中で、体内では合成出来ない9種を必須アミノ酸と呼ぶ
- たんぱく質の”質の良さ”(必須アミノ酸のバランス)を初めて数値化したものが”プロテインスコア”。その後”アミノ酸スコア”として改編。
- プロテインスコアが100の「たまご(鶏卵)」は最も良質なたんぱく質食品。加熱して食べるのがより効果的。
- たまご摂取による血中コレステロールへの悪影響は現在は否定されつつある